
これから個人でフリーランスコンサルになる方から最も良く質問されるテーマは、果たしていくら稼げるのか?会社員で働くよりも稼げるのか?という収入面に関するものです。
今回は、公認会計士を経てフリーランスコンサルとしても活動している筆者の観点で、実際のフリーランスコンサルの収入がどのように決まるのか?どのようにアップを狙っていくかを考えていきます。是非参考にしてみてください。
この記事は以下のような人にオススメ:
フリーランスコンサルで経済面について見直ししようとしている人
コンサルファーム在籍者又はOBで、フリーランスコンサルに興味がある人、独立に向けて準備をしている人
その他、将来的にフリーランスとして様々な企業の経営に関わっていくことに興味がある人
この記事で学べること
フリーランスコンサルの収入・手取りがどのように決まるのかの構造が分かる
フリーランスコンサルの収入・手取りアップのポイントが分かる
目次
フリーランスコンサルの年収・手取りはどう決まるのか
フリーランスコンサルの年収はどれくらい稼げるのか
フリーランスコンサルの手取りを決める税金・社会保険はどれくらいかかるのか
フリーランスコンサルの年収・手取りアップ戦略とは
まとめ:税金・社会保険の仕組みを理解し巧みに活用しよう
1. フリーランスコンサルの年収・手取りはどう決まるのか
フリーランスコンサルの年収と、税金・社会保険などを控除した手取り額はどのように決まるのでしょうか?手取り額を決める内訳、会社員と比較した場合の仕組の違いを理解することが重要なポイントになります。フリーランスコンサルがコンサルティング業務の提供のみを収入としている場合を前提に話を進めていきます。
1.1. 年収は案件数×案件単価×稼働率で決まる
会社員が給与・賞与で得ている収入は、フリーランスコンサルの場合、引き受けたコンサル案件ごとの「売上」に置き換わります。コンサル案件ごとに契約を締結し、それぞれの案件ごとに契約期間×案件単価(通常月額で設定)×稼働率によって売上計算され、年間の売上合計がフリーランスコンサルにとっての収入になります。
例えば、フリーランスコンサルのマッチングサービスを通じて月額150万円の案件を3カ月で稼働率60%で引き受けた場合の収入合計は、270万円(月額150万円×稼働率60%×3カ月)となります。稼働量により収入が変動するため、経済的に不安定な側面もありますが、比較的高単価なコンサル案件であれば常に稼働している必要はなく、働きたい時期に応じ柔軟に稼働を調整できるというメリットがあります。
1.2. 手取りは所得税・住民税・事業税・社会保険料を控除する
収入から控除される税金・社会保険はどのようなものがあるのでしょうか?通常個人事業主に関係する税金・社会保険料の主な項目は以下の通りです。
①所得税:年間の所得金額に応じて課税される税金です。所得税は「国税」と呼ばれ国に納付する税金です。
②住民税:都道府県、市区町村が課税するのが住民税です。所得税と同様に年間の所得金額に応じた税金に加え、課税対象となる人数に応じて計算される均等割をベースに計算されます。
③個人事業税:個人が営む事業のうち、地方税法等で定められた事業(法定業種)に対してかかる税金です。コンサルタント業も対象となります。所得税と同様に所得に応じて一定の税率を乗じて計算されます。
④社会保険料(国民年金保険料): 個人事業主となる場合、国民年金に加入し国民年金保険料を支払う義務が生じます。金額は所得に関わらず月額定額となります。(2022年度は16,590円ですが毎年見直しされます)
⑤社会保険料(国民健康保険料): 個人事業主となる場合、国民健康保険に加入し国民健康保険料を支払う義務が生じます。金額は、世帯ごとに国民健康保険に加入する家族の所得に応じた金額と人数に応じた均等割をベースに計算されます。
※社会保険料は、個人事業主ではなく法人を設立し活動する場合には企業向けの「厚生年金」の制度にしたがって納めることになります。
1.3. 会社員と比べた「税金」のルールの違いを理解する
フリーランスコンサルと会社員とでは、「税金」及び「社会保険料」のルールが大きく異なります。この違いをしっかりと理解して最大限に活用できるようにしましょう。まず「税金」のルールの違いについて以下の表に整理しました。
会社員とフリーランスの税金制度の違い

(引用元:弊社SENJINにて作成)
まず、「税金」のルールで大きな違いとなるのが、課税対象となる所得が会社員は「給与所得」であるのに対してフリーランスコンサルは個人事業主として「事業所得」になることです。「事業所得」はフリーランスコンサルの売上から事業に必要な経費を控除した金額で計算されます。いくら稼ぐかや、何に対して経費や投資の観点で支出するかはフリーランスコンサルが自分の意志でコントロールしやすく、その結果として計算される税金の金額もある程度コントロールが出来るという点で会社員と大きく異なります。
また、会社員は「必要経費」に代わる項目として「給与所得控除」という制度により課税対象となる所得を減らすことが出来ますが、これは税金を計算する際にのみ利用できる制度です。つまり、実際に「必要経費」であれば研修や交際費、PCや通信費用など事業に必要な様々なサービス・製品を自己の便益として受け取ることが出来るのに対して、「給与所得控除」は税金計算以外の便益を提供するものではない点に注意が必要です。このため、フリーランスは実際の収入はそれほど高くなくとも「必要経費」を活用し自分の事業・価値を高めることに使えるという点でメリットがあります。
一方で、フリーランスコンサルは、会社員と異なり個人事業税という税金を新たに負担する必要が生じるので注意が必要です。
1.4. 会社員と比べた「社会保険料」のルールの違いを理解する
次に「社会保険料」のルールの違いについて理解していきましょう。「税金」と並び、国民の義務として支払う必要がある大きな支出になります。以下の表に整理しました。
会社員とフリーランスの社会保険制度の違い

(引用元:弊社SENJINにて作成)
まず、大きな違いとなるのが「年金」と「健康保険」における制度の違いです。フリーランスコンサルとして個人事業主となる場合には、「国民年金」と「国民健康保険」という制度に加入しそれぞれの定めに応じて保険料を納めます。保険料についても、算定の基礎となる金額や料率も異なります。
特に、これまで会社員の場合には給与や賞与をベースに計算された「月額標準報酬額」に一定率を乗じた金額であったのに対して、個人事業主の場合は国民年金保険料は月額定額となり、また健康保険料は算定の基礎が必要経費や基礎控除を除いた所得金額がベースとなる点に注意が必要です。
また、フリーランスとして法人を設立し役員となる際には会社員と同様に「厚生年金」及び「健康保険」に加入することになりますが、算定の基礎が「役員報酬」がベースとなり自己の裁量で決められる点、また、保険料率は会社と個人とで全額負担することになる点が会社員と異なります。
会社員の社会保険料を会社が折半で負担しくれるため年金保険料の負担が比較的低く、その分将来の年金受取りにもメリットがある反面で、フリーランスの場合には所得や法人活用の方法に応じて支払金額をある程度コントールすることが可能です。こっかりと仕組みを理解し幾ら稼ぐか、何に支出し費用として活用するかを自分で決めることで満足度の高くかつ、お金が残る生活を作れるようにになります。 このように、フリーランスにとって「税金」や「社会保険料」の支払金額はいくら稼ぐか、何に支出するか、法人を活用するかなどによりある程度コントロールできるようになります。これらの仕組みをしっかり理解することで満足度が高くかつ、お金も残る生活を作れるように検討してみましょう。
ここからは具体的にどのくらいのお金を稼げるのか、残せるかのイメージを共有します。
2. フリーランスコンサルの年収はどれくらい稼げるのか
フリーランスコンサルとして働く際には、どのくらい稼げるのでしょうか?ここでは、比較的まとまった案件の量があり、高単価の相場観が期待できる「プロ人材向けのマッチングサービス」を前提として解説します。ここでのプロ人材マッチングサービスの説明については、【決定版】フリーランスコンサルのマッチングサービスの選び方・利用法の記事も併せて参考にしてみてください。
2.1. フリーランスコンサル案件の想定単価
プロ人材向けの一つの目安として、最低月額単価は110万円、年収換算で1,300万円以上が目安となるでしょう。 また、コンサルティングファーム出身者であれば、マッチングプラットフォームで紹介される水準の単価としても以下のようなレンジの報酬が見込めます。
コンサルタント:110-150万円
シニアコンサルタント:140-180万円
マネージャー:160-200万円
※PJテーマ内容や商流によりケースバイケースではあるものの凡その相場観
※記載の単価・年収は、100%稼働時の場合
2.2. 年間の稼働率を考慮したシミューレション
前述のとおり、フリーランスコンサルの年収の要素として年間でどれくらい稼働するかが重要な要素となります。具体的にはプロジェクトに参画する期間・月数、参画する際の稼働率によって決まります。ここでは、いくつかのケースを想定し簡易的にシミューレションを行ってみました。
シナリオケース
前提①案件単価: 上述の職階ごとの報酬想定レンジの下限を適用し以下の3つの単価にて試算する
・コンサルタント想定:月額単価110万円
・シニアコンサルタント想定:月額単価140万円
・マネージャー想定:月額単価160万円
前提②稼働率:以下の稼働率のケースにて試算する
Case1.年間通じて月100%で稼働する(最大で稼働した場合を想定)
Case2.年間通じて月60%で稼働する
Case3.年間のうち6カ月のみ月100%で稼働する
Case4.年間のうち6カ月のみ月60%で稼働する
加えて、Case1の参考として会社員(総合コンサルファーム在籍想定)として働いた場合の年収と比較します。
フリーランスコンサルの年収シミュレーション例

(引用元:弊社SENJINにて作成)
シミュレーションの結果、分かることとして以下があげられます。
Case1で年間通じて100%稼働した場合には、いずれの職階でも会社員の年収を大幅に上回る(約50%以上)
Case2では週三日だけの稼働ですが、コンサルタント、シニアコンサルタントは会社員年収とほぼ同水準であり、マネージャーの場合と比べても遜色ない水準となります。
Case3/4においては半年間だけ100%稼働を行なった場合でも、年収水準は400~600万円を確保できるため、一般的な生活水準を満たすことは可能と想定されます。
3. フリーランスコンサルの手取りを決める税金・社会保険はどれくらいかかるのか
収入から控除される税金・社会保険料はどの程度支払が発生するのでしょうか?厳密に計算するよりも、大きなイメージを知ってもらうため簡易的な前提でこちらもシミューレションを実施しました。
フリーランスコンサルの売上(年収)・手取りシミューレション例

(引用元:弊社SENJINにて作成)
シミューレションの前提
フリーランスコンサルの案件(事業所得)のみの収入があるケースを想定し、年間の売上を4つのケース(Case1:売上2,000万円、Case2:売上1,000万円、Case3:売上800万円、Case4:売上500万円)に主要な税金および社会保険料を算出、差引残高を計算しました。
個人事業主で国民年金保険・国民健康保険に加入
単身世帯、年齢は40歳未満
必要経費は売上の30%を利用する(備品購入、交通費、研修費、交際費等諸々)
実際に必要経費と税金保険料を控除した金額は、それぞれのケースでCase1: 835万円、Case2: 470万円、Case3:387万円、Case4: 255万円となりました。
もちろん、必要経費を節約することで、これ以上の現金を残すことも可能です。一方で、必要経費は自己投資や通信費やPC代などにも実際に仕事や生活を送るうえでの満足度を高める効果もあるため、実際に事業に関係がない生活費や娯楽費との予算との兼ね合いも踏まえていくら稼ぐか、経費に支出するかも検討してみましょう。
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